証拠に基づく政策作りへ

証拠に基づく施策・政策を新型コロナウイルス感染症に関して考えるときに、下記の文章が説得的であると思います。

『新型コロナウイルスとEBPM(証拠に基づく政策作り)』 | 山口一男 2020年3月4日

独立行政法人経済産業研究所 ウェブサイト

https://www.rieti.go.jp/jp/special/special_report/111.html

新型コロナウイルス感染症に関しては、こども・若者(0~10代)の発症者率は2%程度と低く、重症化率もごくわずかです。また、こどもから大人に感染したという例は報告されていません(家庭での大人からの感染とされています)。

厚生労働省が行動を控えることが望ましいとした若者(10代~30代)のうちの10代とは、正確には10代後半をイメージしていることを、専門家会議の委員がインタビューで答えています。(つまり小中学校を休校にすることに感染症対策としての大きな効果は期待できません。)

感染が多いのは30代~60代、重症化するのは60代以上です。むしろ大人が気をつける必要があります。

学校を休校にすることはわかりやすい対策としてあるだけで、感染症の拡大防止に大きな効果はなく、むしろ休校期間中に不特定多数の人と関わるリスクを高める可能性すらあります。一方で、子どもの体系的・構造的な学び・遊び・交流の機会を奪います。また、保護者の休業などを通じた経済的損失などを考えると、一律に休校とすることの社会的コストは莫大になるでしょう。

『新型コロナウイルスとEBPM(証拠に基づく政策作り)』の文章の一部を、少し長くなりますが引用しておきます。

感染の伝播を防ぐには、まず(1)誰が感染者であるかをできるだけ正確に把握することで感染者を隔離し、未感染者が感染者と意図せず接触する機会を少なくすることであり、(2)隠れた感染者が「被感染度(感染を受けやすい度合い)」の大きい未感染者と接触が起きやすい状況を減らし、さらには(3)感染したとき誰が重症化しやすいかをデータから特定し、資源に限りがある時は、重症化しやすい人への感染・治療対策を優先することである。

・・・次に(2)の隠れた感染者と未感染者の接触を減らすことだが、重要なのは未感染者と未感染者の接触は感染伝播に影響しないという点である。政府は2月28日より小中高の一斉休校を要請したが、これは英断どころではないと筆者は思う。後述するが、年齢20歳未満の人々は被感染率においても、感染者の死亡率においても最も低い。感染死亡者数が1000人を超えた2月21日時点で中国における0-9歳の死亡者数は0、10-19歳は1人で、死亡者が2900人を超えた現在も0-9歳の死亡者数は0である。この事実は、学校はその学校に感染者が出ていない限り、未感染者である児童・生徒を半ば隔離している状態であり、電車通学の場合を別として、小・中学校での教育は感染について比較的安全な場所で児童・生徒を保護することを意味する。一方、休校にした場合、その時間をどう過ごすかによる不確定性によるリスクが生じる。もし休校になった中学生や高校生の一部が、自宅にこもらず町中に出て例えばゲームセンターなどに行くなら、学校に行くよりはるかに不特定多数の人との接触機会が増える。一方、多くの人が指摘しているように、休校に伴う社会的コストは非常に大きい。児童・生徒の学習機会の損失、児童保護のために仕事を休む親の所得損失(非正規雇用者の場合)や就業機会の損失などであるが、全国規模となればそのコストは計り知れない。

『新型コロナウイルスとEBPM(証拠に基づく政策作り)』 | 山口一男 2020年3月4日   独立行政法人経済産業研究所 ウェブサイト

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