本『DV加害者が変わる 解決志向グループ・セラピー実践マニュアル』

 問題に焦点をあてるのではなく、小さな具体的行動をゴールとして設定して、自らの変化の力を実感していく解決志向アプローチのアメリカでの実践が紹介されています。グループ・ワークでのやりとりの詳細が再現されており、大変参考になります。

 処罰、法的決定、変化の責任をとらせることの三者は明確に分離しておくべきであるとされています。セラピストは、そもそも社会的に処罰を与える役割をもってはおらず、人の変化の自主的過程を援助するという専門性の基本に立ち返った対応に徹するというシンプルな立場です。

 その際、問題を語る「プロブレム・トーク」に深入りすることなく、課題解決に向けた「ソリューション・トーク」が徹底されます。
 その際、自らの「ゴール」の設定が求められるのですが、それは、(1) 生活をよくするもの (2) これまでしていない行動をするもの (3) 他人が見てその変化がわかるもの (4) 他人がそれによって前向きの影響を受けるもの という条件をクリアしておく必要があります。
 つまり、「コミュニケーションがうまくできるようになる」といった抽象的なものではだめで、週に何回か実施可能な、具体的な行動メニューが求められるのです。

 この各人のゴール設定には、丁寧に時間がかけられています。目にみえるゴールとその行動による本人及び周囲の人の変化の本人自身による体感が、達成感やその後の行動の好循環をうみだしていくことになります。

モー・イー・リー/ジョン・シーボルド/エイドリアナ・ウーケン 2003=2012
玉真慎子・住谷祐子 訳
『DV加害者が変わる 解決志向グループ・セラピー実践マニュアル』
金剛出版

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