高齢者福祉は新たな4つの自治体がそれぞれに担いますが、「介護保険」は担いません。
わかりにくいのですが、介護保険は新たにできるもうひとつの自治体(のようなもの)が担当します。大阪市を4つに分割して、さらにもうひとつできる自治体(のようなもの)が「一部事務組合」です。
これは、法的にも「特別地方公共団体」と位置付けられる団体です。大阪市を4つの自治体に分割すると、実は5つめの自治体もできるわけです。
この5つめの自治体にも議会があります(4つの特別区の議員が兼務予定)。予算と職員は4つの特別区の自治体から出し合うことになります。
分けるに分けられない事業をこの「一部事務組合」に集めているので、「介護保険」「児童養護施設等の運営」「市民利用施設」「斎場・霊園」「住民情報系システム等」といった、まさにごった煮の事業団体ができあがります。ここにおよそ310人の職員が充てられます。
話を高齢者福祉に戻すと、高齢者福祉全般は4つの「特別区」が担当しますが、介護保険事業は4つの特別区で作るいわばバーチャルな自治体(一部事務組合)が担当します。大阪市を廃止することで、この分野ではかえって複雑なしくみがうまれるのです。
しかもこの新たなしくみを維持するコストが計算されていません。窓口サービスは特別区において実施とされていますが、具体的にどのような形になるのか、準備がはじまらなければわからないのです。
全国的にも高い水準にある大阪市の介護保険料は、介護の給付ニーズを反映してもいます。介護保険事業は介護予防などとあわせて、一体的な高齢者施策として進めるべきものです。しかし現実には、これらが切り離されてしまうのです。介護の現場では大混乱が起きるのではないでしょうか。