ずいぶん昔(1990年代)に、『リフ・ラフ』と『レイニング・ストーンズ』という映画を合わせて観て衝撃を受け、ケン・ローチ監督を知りました。
最近では、『家族を想う時』(2019年)を観ました。監督は引退を表明していたけれど、前作(『わたしは、ダニエル・ブレイク』)でフードバンクを取材して、やはりどうしてもこの映画も撮らねばと考えたそうです。
ケン・ローチ監督の映画のほか、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』や是枝裕和監督の『万引き家族』、新海誠監督の『天気の子』などを読み解いていきます。そしてそれはいつのまにか、チャップリンの血をたどる作業になったのだといいます。
弱者への共感以外に、これらの映画を貫くものがもうひとつあります。
子どもです。
『ジョーカー』も含めて、本書で扱った映画はどれも貧しさの中に生まれてしまった子どもたちの物語です。貧しさを選んで生まれてくる子どもはいません。子どもには何の責任もありません。貧しい子どもの存在は、自己責任論に対する最も根源的な反論です。
町山智浩 2021 『それでも映画は「格差」を描く』 インターナショナル新書(集英社)