第二次世界大戦、独ソ戦にて、女性だけの狙撃兵の小隊のゆくすえが描かれた戦争小説です。文庫本で600ページほどありますが、読みだすと止まらなくなる、ひきこむ力があります。
これが、2021年に書かれていたのか、と驚きました。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻しますが、そこに出てくる地名や関係性もが、この小説に描かれていたからです。2024年に出された文庫版のあとがきに、著者の苦しい心情が吐露されています。
どのような時代も、いかなる民族、国籍、人種も、その全体を憎悪してはならず、戦争行為と悪行の責任が、それら全体に還元され、懲罰の対象と捉えられることがあってはならず、同様に、いかなるアイデンティティも、共感の対象から排除されてはなりません。
逢坂冬馬 2021(2024) 『同志少女よ、敵を撃て』 ハヤカワ文庫 (「文庫化によせて」より)
ソヴィエトの、ドイツの、さまざまな国籍、立場、性別、関係性のなかにある人々の複雑な相互性と、目をそむけたくなる現実が、この作品には書かれています。その先に生きることをめざして。