水俣病になじみの深い医師と患者の間では、徐々に、少し陽気で気はずかしそうな、あのなれあいをかもし出す。そうすることによって、両者は、互いをいたわっているようにみえる。不思議な優しさが両者の間に漂い、患者たちは、自分たちに表れている障害を、あの、ユーモアにさえ転じようとしている気配があるのだった。(石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣病』1972年・講談社文庫版)
そこでは、助けるもの/助けられるもの、という関係の<転回>が、起こっているのでしょう。そして、極限の状態であっても、にんげんには、やさしさとユーモアをたずさえて生きるかたち/ちからがあることを、教えてくれているかのようです。