「社会的養護」の<当事者>って、誰のこと?

 僕は、「社会的養護の当事者」という言葉の使い方にこだわっています。

 「社会的養護」は、公的な責任として、子どもを養護(養育)することをいいます。
 「社会的養護」は、大きく「施設的養護」と「家庭的養護」に分けられます。
 「施設的養護」には、乳児院児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム、助産施設といった施設での対応があります。
 「家庭的養護」には、里親などによる対応があります。

 さて、以前僕は、『社会的養護の当事者グループ全国ネットワーク「こどもっと」運営に関する経過資料』(2011/01/14)において、下記のように記しました。

本稿では、“当事者”について、下記のとおり表記する。
 ・児童養護施設を経験した者、里親家庭で育った者=「施設等経験者」
 ・各当事者グループに関わる、施設等経験者以外の者=「支援者」
(狭義の当事者)=「施設等経験者」
(広義の当事者)=「施設等経験者」+「支援者」
・本稿で、単に当事者という場合、広義の当事者をさす。

 残念ながら、この考え方は、「こどもっと」会議では理解されなかったのですが、ここでは、広義の当事者を<当事者>と表記しましょう。
 さらに、社会的養護の当事者を、最も広く捉えるのならば、すべての人が<当事者>ということになります。なぜなら、社会的養護は定義上、「社会」の構成員の責任として、社会総がかりで取り組むものだからです。

 しかし、一般に、「社会的養護の当事者」というと、児童養護施設等で育った人、里親のもとで育った人を指すことが多いようです(=狭義の当事者)。けれど、そうであるならば、「施設等経験者」と呼んだ方が、実態にあっています。

 僕のように、細々と週末里親をしている者はもちろん、本格的に里親に取り組んでいる人、施設の職員やさまざまな支援者等は、「社会的養護の当事者」とみなされないことが多いのです。

 このことは、「社会的養護」から、「社会全体で取り組む」という意味を奪ってしまうおそれがあると考えています。特別な人たちのための特別な対応として、「かわいそうな人たち」のための「対策」として、理解されてしまいかねないのです。

 もちろん、「施設等経験者」の声を聴くことは、とても大事なことです。
 それとともに、日本においてはとても少ない里親登録者数や、施設職員の劣悪な労働環境なども、社会的に取り組むべき課題です。子育てに、社会全体で協力して取り組む一環として、「社会的養護」があると思っています。

 だから、「社会的養護」はすべての人が<当事者>なんだということを、あらためて、伝えていきたいと考えています。

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