文脈と構造を分析し尽くす

芸術起業論

芸術起業論

 欧米とりわけアメリカ合衆国中心の芸術業界で、芸術家・村上隆がどのようにして評価されるに至ったかを赤裸々に語っています。
 まずは、欧米における、批評家の批評の厚みを基礎とした、つまり芸術史をふまえたうえでの、作品が評価されるための文脈と業界の構造を徹底的に分析し、理解しようとしています。
 そのうえで、自らの強みである日本文化を、欧米中心の芸術史の中に位置づけるために、歴史と理論と概念を提示し、かつそれを適切に翻訳し、伝達することに相当の労力を割いています。

 このような「マネジメント」に力を注ぐことではじめて、現在の「ムラカミタカシ」が「世界」で評価づけられたことを喝破しています。このことは、芸術業界に限らず、どのような分野でも必要になることだろうと思います。

 それにしても、第3章で紹介される、6800万円の値段がついて話題になったフィギュアが評価を得るまでの過程は、読んでいてほんとうに笑えます。けれど、だからこそ、この世界には勢いがあるのだろうことも想像されるのです。仏教彫刻集団が現代日本のフィギュア制作メーカーにつながるというのも、思わず納得してしまいます。

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