NHK「福島県浪江町〜大津波と原発事故に引き裂かれた町〜」

 何気なく見始めた番組でしたが、そこから動けなくなりました。
 浪江町・請戸地区で、家族を失った人たちの語りを、淡々と集めています。

 原発事故が重なり、行方不明者も、1か月以上、放置されました。
 傷みの激しい遺体と対面し、我が子と確信が持てなかった、そんな苦しみを、今まで、家族ともあえて話すことを避けてきたことがらを、語っています。

 それは、過去のことではなく、震災から1年8か月経った、いまを生きる、<現在>の苦しみです。

 別の方は、車に乗っていて津波に会い、娘はいつのまにか車外に投げ出され、母親は、水が引いた時には、助手席で息を引き取っていました。

「探そうなんて、思わなかった。諦めちゃったんだ」
「ほんとうのこというと、俺だって、死にたかったんだもの」
・・・
「困ったぞ、なんて、言葉になんかなんねえぞ。解決しねえんだもの」

 言葉にならない、ということを、饒舌に話し続けます。
 今まで、何十年も、困った困ったといいながら、解決してきた。けれど、こればっかりは、解決できないんだ・・・。

 そのような断念を、言葉にならないということを饒舌に語るという様は、水俣の漁師と相通ずるものがあると感じました。
 僕たちの社会は、ほんとうに、同じことを繰り返しています。
 この証言記録に、僕はどのように向き合うことができるのか。そして、何ができるのか。心を揺さぶられる、秀逸なドキュメンタリー番組でした。

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