大阪市の現行2か所の児童相談所の一時保護所を5つの特別区に設置すると、
【職員数】 79名 → 149名 (70名増・89%増)
【歳出額】 6億7600万円 → 11億4900万円 (4億7300万円増・70%増)
となります(第10回特別区設置協議会資料 作成:大阪府・大阪市特別区設置協議会事務局:大阪府市大都市局)。
このコスト増(4億円)は、ランニングコストの増要素に反映されていますが、同じような試算は、なぜか、児童相談所本体にはされていません。
そして実は、児童相談所だけでなく、特別区に移行される1兆3000億円の事業費の99%に対して、このような試算がされていないのです。
これでは、大阪市が廃止され、特別区に移行した後の行政サービスがどうなるのか、判断のしようがありません。
試算された一時保護所の事例から普通に論理的に考えると、大幅なコスト増になるはずで(1兆3000億円の全体で70%増になってしまったら、えらいことになります)、現状の住民サービスが維持されるとは考えられません。
しかし、予算が湧いて出てくるわけではないので、住民サービスを切り下げるしかなくなると考えるのが普通です。
例えばここで話題にした児童相談所は、相当に(今以上に)過酷な状況に追い込まれることになります。現在の業務を維持する経費が70%増(1.7倍)になるとしても、予算が増えるわけではないのであれば、移行後に1.7倍の仕事をするか、サービスを1.7分の1に切り下げるかしかありません。児童福祉士が、100件のケースをもっていたとして、明日から170件にするのは物理的に不可能です。ということは、例えば児童虐待の通告に到底対応できない状況になる、といったことが予測されるわけです。
巨大な予算で市民生活に大きな影響があるにもかかわらず、その試算やシミュレーションすらされていないのでは、賛成のしようがありません。この状態で賛成するのは、言ってみれば、金額の書かれていない契約書にサインするようなものだということです。