【大阪市「消滅」住民投票】 ギャンブルとしての住民投票 大阪市廃止の本質

「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」・・・かつて大阪府知事だった橋下氏が公言していたように、大阪市廃止の住民投票の本質は、政令指定都市である大阪市の権限、税財源を大阪府に吸収することにあります。

大阪市廃止後の(旧)大阪市域のあり方などは後づけで、実際、特別区は当初8区または6区といっていたものが、7区または5区となり、現在は4区となっています。ニア・イズ・ベターと言いながら、当初の倍の大きさになっています。
 
私自身は、大阪市の何らかの形での分割または分権化そのものには、必ずしも反対ではありません。しかし、今回の大阪市廃止・特別区設置の設計では余りにも杜撰(ずさん)すぎて、賛成することはできません。そもそも、廃止・分割にかかるコストが庁舎とシステム経費以外にまともに試算されていない現状では、判断のための情報が提供されていないというしかありません。

昔、多くの自治体が合併したのは、総務部門等を一元化することによる効率化を図ることが大きな目的でした。その逆に、市を廃止して分割をするわけですから、現在よりコストがかかることになるのは当たり前です。
その意味では、大阪市財政局が、単純に市を4分割した際のコストが1年あたり218億円増えるとしたのは当たり前のことと言えます(基準財政需要額の試算。下記記事参照)。

大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算
毎日新聞2020年10月26日
https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/061000c

むしろ、市を分割してもコストはかからない、かつ住民サービスは維持されるなどと言えるのは、そもそも行政のしくみがわかっていないか、あるいは、わかったうえで都合の悪いことを伏せているかのどちらかです。

ここで、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」(=大阪市民からすれば、税財源と権限を差し出す)かどうかという今回の投票の本質がみえてきます。

住民サービスの維持が明言されているのは、2025年1月の移行時点までのみで、その後は、「各特別区長・議会の判断」としか言われていません。そして、2025年1月以降のありようはまともに議論されていません(例えば基準財政需要額の試算の拒絶など)。結局のところ、大阪市域の住民の生活と行政サービスがどうなるかは、ふたを開けてみないとわからない、ということです。つまりはギャンブルということです。

古来から、ギャンブルは、必ず胴元が勝つ(儲かる)ことになっています。ここでの胴元は、大阪維新の会ですね。
大阪市民は、負けるギャンブルに多額のコストを払うことになるのでしょう。

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