親でない大人の役割 −映画『少年と自転車』−

 施設(ホーム)で暮らす少年と、その「週末里親」になった大人の物語です。
 少年には、父親がいるけれど、一時的に施設に預けられました。当然ですが、少年は父親の迎えを待ち望み、ある時、失踪してしまった父親を探し回ります。
 その過程で知り合った女性に、少年は自ら、「週末里親」になることを頼みます。たくましい少年です。

 女性が「週末里親」になる明確な動機は描かれません。おそらくほんとうに、それ自体はあいまいなものなのだろうと思います。
 そして、週末を一緒に過ごすだけとはいえ、日常の些細なふるまいから、友達関係、大きなトラブルに至るまで、様々なことを通じて、少年との関わりを深めてゆきます。
 そのように普通に生活する大人が、少年のそばにいて、身の丈に合ったかかわりをもつことに、社会的な家族としての「週末里親」の大きな意味があるのだろうと思うのです。

 とある「事件」のあと、少年はゆらゆらと再び立ち上がり、倒れた自転車を起こしてペダルを踏みだし、もうひとつの<ホーム>へと走り出してゆきます。

映画『少年と自転車』公式サイト

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